「ChatGPTや生成AI、すごいのは分かるんだけど、いざ仕事で使ってみると『コレジャナイ』回答しか返ってこない……」
そんな経験はありませんか?
当たり障りのない文章はスラスラ出てくるのに、本当にかゆいところに手が届く「そう、これだよ!」というアウトプットが出てこない。
実はその原因は、プロンプト(指示文)のテクニック不足ではなく、「文脈(コンテキスト)の設計ミス」にあるかもしれません。
今回は、ITコーディネータ(コンテキスト設計コンサルタント)辻本泰雄(tsujimoto yasuo)氏が提唱する「コンテキストエンジニアリング」の概念を基に、AIを単なる道具から「最高の思考の相棒」へと変えるためのフレームワークをご紹介します。
なぜAIは「いい感じ」にしてくれないのか?
まず、AIに対する認識を改める必要があります。
今のAIは「超優秀だけど、あなたの会社の事情を全く知らない外国人エリート」のようなものです。
彼らに向かって「例の件、いい感じでまとめておいて」と頼んでも、通じないのは当然ですよね。私たち人間が無意識に共有している「暗黙の了解」や「文脈」が、AIには一切ないからです。
AIに最高のアウトプットを出させるためには、「AIのための思考環境(オフィス)」を設計してあげる必要があります。それが「コンテキストエンジニアリング」です。
AIへの指示を劇的に変える「4層モデル」
では、具体的にどうすればいいのでしょうか?
闇雲に長文を打つのではなく、指示を4つの階層(箱)に分けて考えるのが効果的です。
第1層:目的(Goal)
まずは「何のためにやるのか」というゴール設定です。
ここで重要なのは、ターゲットや成果物だけでなく、AI自身の役割(ペルソナ)も定義することです。
- 悪い例: ブログ記事を書いて。
- 良い例: あなたはテクノロジーに詳しくない中小企業経営者に対し、専門用語を使わずにDXの重要性を説く、経験豊富な経営コンサルタントです。
これだけで、AIの「思考のOS」が決まり、トーンや視点が定まります。
第2層:制約(Constraints)
次に、守るべきルールを決めます。「自由」は時にAIを混乱させます。「創造性は不自由から生まれる」のです。
- 具体例: 予算10万円以内、文字数800字厳守、専門用語は3つまで。
こうしたガードレール(制約)があることで、AIの暴走(ハルシネーションや現実離れした提案)を防ぐことができます。
第3層:背景(Background)
AIは「文脈の孤児」です。あなたの会社だけのローカルな情報を与えましょう。
- 方法: 過去のメールのやり取り、議事録の抜粋、プロジェクトの経緯などを、「以下は参考資料です」と区切って貼り付ける。
これにより、どこにでも当てはまる一般論ではなく、「あなたの会社のための具体策」が生まれます。
第4層:タスク(Task)
最後は具体的な作業指示です。ここでのポイントは「動詞の解像度を上げる」こと。
「要約して」という言葉一つでも、人によってイメージは異なります。
- 悪い例: この議事録を要約して。
- 良い例: 議事録から「決定事項」と「ToDo」のみを抽出し、担当者と期限を明記した上で、マークダウン形式の表でリスト化してください。
ここまで定義すれば、AIが迷う余地はありません。
それでも思いつかない時は「ソクラテス」になってもらう
「4層モデルを毎回考えるのは大変そう……」
「そもそも自分が何をしたいかモヤモヤしている」
そんな時は、AIに質問させましょう。
「私の要望はまだ漠然としています。最高のアウトプットを作るために、あなたが知るべきこと、私に確認すべきことを質問リストにしてください」
と指示するのです。これはソクラテスの「産婆術」と同じ原理です。
AIからの質問(ターゲットは? 制約は?)に答えていくだけで、自然と最強のプロンプトが完成し、あなた自身の思考も整理されていきます。
まとめ:操作者(オペレーター)から設計者(アーキテクト)へ
これからの時代、人間に求められるのはAIをただ操作するスキルではありません。AIがパフォーマンスを発揮できる環境を整える「設計力」です。
AIへの指示を明確にすることは、自分自身の思考の曖昧さをなくす訓練にもなります。
将来的には、AIが空気を読んで勝手に動いてくれる時代が来るかもしれません。しかし、そうなったとしても最後に残る人間の仕事は「意図(インテンション)」を持つことです。
「そもそも、自分は何を成し遂げたいのか?」
この根本的な「問い」を立てることこそが、私たち人間にしかできない、最も重要な仕事なのです。
Based on: 辻本泰雄(tsujimoto yasuo)氏「Context Engineering」解説資料