【第30回】【AIに使われるな】思考を加速させる6つの革新的アイデア発想法

「AIの使い方が少し変わってきた」と感じることはありませんか?
ChatGPTのようなAIに、プロンプトそのものを考えさせる使い方です。一見、非常に効率的に見えますよね。AIがAIの使い方を教えてくれるなんて、まるで夢のようです。

しかし、この流れに少し危険な兆候を感じています。
何も考えずにAIが作ったプロンプトを鵜呑みにすることは、本当に私たちの創造性を高めるのでしょうか?むしろそれは、気づかぬうちに私たちがAIに思考を支配される未来への第一歩なのかもしれません。

この記事では、そうしたAIとの付き合い方とは全く逆の、AIをあくまで「最高の相棒」として、私たち人間が主導権を握り、自由な発想を加速させる6つの強力な技法を、具体的なプロンプト例とともに徹底解説します。

これを読めば、AIに使われるのではなく、AIを真に使いこなすための本質的なヒントが掴めるはずです。

目次

技法1:連想力を爆発させる「関連キーワード法」

「自分には想像力なんてない」と諦めてしまった経験はありませんか?
実は、想像力の中心には「連想力」があります。一つの物事から、どれだけ多くの、そして意外な物事を連想できるか。このスキルこそが、斬新なアイデアの正体なのです。

この最も重要な「連想力」を、AIにアシストしてもらい爆速で鍛えるのがこの技法です。

実践例:「全く新しいレトルトカレー」のアイデア出し

競争の激しいレトルトカレー市場で、常識を覆すアイデアを生み出してみましょう。

【プロンプト例】

「新しいレトルトカレーのアイデア」というテーマから連想できる単語を30個挙げてください。
次に、関連が薄くてもいいので、そこからさらに連想できる単語を100個挙げてください。

AIはまず「スパイス」「本格的」といった直接的な単語を、次に「宇宙食」「サステナブル」「パズル」といった意外な単語を挙げてくれました。

この中の「パズル」というキーワードから、

  • 謎解きスパイスキット「名探偵のカレー」
  • 食べる発掘パズル「古代遺跡の秘宝カレー」
  • パッケージが立体パズルになるカレー

といった、一人では思いつかないようなユニークなアイデアが生まれました。

【ポイント】

発想を広げるのが目的なら、プロンプトはあえて詳細な背景を書かず、曖昧にするのが効果的です。AIの連想の幅が広がり、面白い単語が出やすくなります。

技法2:思考の堂々巡りを破壊する「広い観点法」

画期的な企画を考えたいのに、いつも同じようなことしか思いつかない…その原因は、脳がエネルギーを節約しようとする「思考の固定化」にあります。

この脳の仕様をハッキングし、強制的に思考をワープさせるのがこの技法です。

実践例:「売上が伸び悩むカフェ」の集客アイデア

以下の6つの観点から、AIに強制的にアイデアを出させます。

  1. 人: 関わる人々、立場、能力
  2. 物: 製品、素材、生き物
  3. プロセス: 人と物の動き、手順
  4. 環境: 場所、時間、状況
  5. 意味価値: 目的、ゴール、感覚的な価値
  6. 互感: 見た目、音、手触りなど

【プロンプト例】

停滞したカフェの集客について、多様なアイデアを生成してください。

以下の6つの観点から、具体的なアイデアを挙げてください。

  1. 人(例:ターゲット客、スタッフ、地域住民など)
  2. 物(例:看板メニュー、内装、備品など)
  3. プロセス(例:注文方法、決済、顧客体験など)
  4. 環境(例:店舗空間、立地、周辺環境など)
  5. 意味価値(例:コンセプト、ストーリー、社会貢献など)
  6. 互感で感じるもの(例:香り、BGM、照明、食感など)

AIは「スタッフの魅力を向上させる」「注文決済方法の多様化」「店舗のコンセプトを再定義する」など、あらゆる視点からアイデアを網羅的に提示してくれます。人間が一人で考えるとどうしても偏りがちですが、AIを使えば、思考の死角をなくすことができるのです。

【ポイント】

人間は「広くたくさん探すこと」と「一つのことを深く掘ること」を同時に行うのが苦手です。まずはAIに広くアイデアを出させ、人間はその中から有望なものを深掘りするという役割分担が効果的です。

技法3:偶然をヒットに変える「ランダム単語結合法」

会議で「何か面白いアイデアは?」と振られ、頭が真っ白に…そんな経験、ありませんか?
実は、創造性とは「互いに離れたアイデアを結びつけて新しい組み合わせを作る能力」であると、科学的にも定義されています。

この「無関係なものを強制的に結びつける」という骨の折れる作業を、AIに全自動でやらせてしまいましょう。

実践例:「手軽に始められて稼げる副業」のアイデア

【プロンプト例】

  1. 日本語の単語をランダムに100個、スラッシュ区切りで列挙してください。
  2. その後、列挙した単語の中からランダムに単語を選び、「手軽に始められる副業のアイデア」というお題と組み合わせて、魅力的なアイデアを3つ考えてください。

AIは「記憶」×「料理」で『思い出の味 再現サービス』、「料理」×「声」で『声で届けるお料理ラジオ』などを提案してくれました。
さらに意外性を求めるなら、AIが挙げた単語の中から「怒り」「破壊」「孤独」といった、副業とは程遠い単語をあえて選び、アイデアを深掘りさせます。

すると、

  • あなたの代わりにウィットに富んだ悪口を考えるサービス
  • 退屈な日常を破壊する「今日の裏ミッション」配信サービス

といった、より斬新なアイデアが生まれました。

【ポイント】

AIの出力はあくまで起点です。AIとの対話のキャッチボールを重ねることで、単なるAIの提案ではなく、あなた自身のアイデアとして磨き上げていくことができます。

技法4:常識を打ち破る「異質の取り入れ法」

正論ばかりで、誰もワクワクしない。そんな安全なアイデアばかりでは、革新的な企画は生まれません。
イノベーションの父、シュンペーターは「イノベーションとは既存のものの新しい組み合わせである」と定義しました。全く異なる世界の知恵を借りて、化学反応を起こしましょう。

実践例:「完璧主義で締め切りを守れない後輩」への対応策

「締め切りを守れ」という正論では解決が難しいこの問題に、異分野の知恵を借ります。

【プロンプト例】

以下の課題の解決策について、全く異質な分野の要素を7つ挙げ、それぞれの要素を取り入れた解決案を考えてください。
また、それにはどのような効果がありますか?

【課題】
やる気も人柄も良い後輩なのですが、完璧主義のあまりいつも締め切りを破ってしまいます。チーム全体に影響が出ているのですが、正論で注意してもなかなか改善されません。

AIは、「農業」「美術デッサン」「ビデオゲーム」といった全く異なる分野から、以下のような解決策を提案しました。

  • ビデオゲームの応用: 仕事を複数の小さな「クエスト」に分解し、クリアするごとに「経験値」が溜まるシステムを導入。レベルアップ感覚で楽しくタスクを進めてもらう。
  • 美術デッサンの応用: まずは完成度を問わない「下書き(全体の構成だけ)」を、極端に短い制限時間で提出させる。完璧を目指す前のハードルを下げる。

【ポイント】

この技法は、ロジックだけでは解決できない人間関係のような複雑な課題にこそ、思いがけない突破口を見出す力を発揮します。

技法5:脳を強制リフレッシュする「写真ヒント法」

もう考えられることは全て考え尽くした…。そんな思考の行き詰まりは、物事の使い方を一つしか思いつけなくなる「機能的固着」という脳の罠が原因です。

この罠を破壊するには、課題と「全く無関係な情報」に触れるのが有効です。AIとたった1枚の写真を使って、机の上にいながら脳を強制リフレッシュさせましょう。

実践例:再び「全く新しいレトルトカレー」のアイデア出し

今度は「ナイアガラの滝」の写真を使ってアイデアを出してみます。

【プロンプト例】

(ナイアガラの滝の画像を添付して)
この画像から思い浮かぶことを10個挙げてください。
次に、それらを材料にして「全く新しいレトルトカレーを開発してヒットさせる」というお題で、妥当なアイデアを3つ、意外なアイデアを3つ考案してください。

写真からAIは「圧倒的な水量」「轟音」「マイナスイオン」「断層」などを連想。そこから、

  • マイナスイオンカレー: 食用炭パウダーを練り込んだ真っ黒な「食べる癒し系デトックスカレー」
  • 轟音クラッシュスパイスカレー: 食べる直前にナッツやスパイスを振りかけ、ザクザクの食感を楽しむ「体験型カレー」
  • 大地の断層ジオカレー: 複数のカレーが美しい地層のように重なった、見た目も楽しいカレー

といった、前回とは全く違う角度の、体験価値にまで踏み込んだアイデアが生まれました。

【ポイント】

出発点を変えるだけで、アイデアの方向性は劇的に変わります。「妥当な案」と「意外な案」の両方を聞くことで、AIの発想をさらに広げることができます。

技法6:思考のリミッターを外す「制約なき発想法」

「どうせ無理だ」とお金や時間の制約を理由に、無意識にアイデアにブレーキをかけていませんか?
その思考の壁を、AIの力でぶち壊すのがこの技法です。

実践例:「日本の人手不足問題」の解決策

解決策が見えないような、壮大なテーマにこそ効果を発揮します。

【プロンプト例】

エネルギー、資金、時間、人材、法規制の制約が全くないとしたら、「日本の人手不足問題」を解決する最も理想的な手段は何だと思いますか?

AIが出した答えは、「AIとロボティクスによる社会の完全自動化と、それに伴うユニバーサルベーシックインカム(UBI)の導入」でした。
人手不足という問題を解決するのではなく、「人手不足という概念そのものを解消する」という、まさに制約がないからこそ生まれるアイデアです。

【ポイント】

もちろん、これを明日から実現するのは不可能です。しかし、このSFのようなアイデアを「発想のジャンプ台」にすることで、「過疎地域の物流だけでもドローン化できないか?」といった、現実的なアイデアへの足がかりが見えてくるのです。

まとめ:未来の格差は「問いの質」で決まる

今回ご紹介した6つの技法に共通するのは、「人間が問いを立て、AIがそれに答える」という点です。常に人間が主導権を握り、AIを思考の道具として使いこなしています。

冒頭でお話しした「プロンプトをAIに考えさせる危険性」の答えが、ここにあります。
何も考えずにAIの出力を鵜呑みにし、AIが作った道筋をただ歩くのなら、それは実質的にAIに思考を支配されている状態と言えるでしょう。

AIによる未来の格差とは、単にプロンプトを知っているか知らないかではありません。
AIに対して、自分自身の頭で考えた「自分だけの面白い問い」を立てられるかどうか。
その差が、AIに使われるだけの人と、未来を切り開く人を分ける決定的な格差になると、私は信じています。

あなたが今回の記事を見て、一番面白そうだと感じた技法はどれでしたか?
ぜひ、この記事を参考に、AIを最高の相棒にして、あなたの創造性を解き放ってください。

参考メタプロンプト

(コピペして<>の中身をあなたのテーマに変えるだけで使えます)

技法1 関連する要素

〈 課題や目的を記入 〉
この問題から連想できる単語を30個あげ、次に関連が薄くてもいいので連想できる単語を100個あげてください。

技法2 広い観点

広くアイデアを出すには以下に示す6観点が役立ちます。カッコ内は観点の詳細です。これらを参考にして、〈 アイデアを得たい対象を記入 〉について多様なアイデアを生成してください。→人(主体、客体、単数、複数、立場、能力、市場、仕入れ先)、モノ(製品、素材、人以外の生き物)、プロセス(人とモノの動き、役割、相互作用)、環境(風土、取り巻く場、状況、時間、空間、構造)、意味・価値(意味、価値、感性、感情、金、情報、強み、機会、ビジョン、ゴール)、五感で感じるもの(色・形、音、におい、味、質感、触感、食感)

技法3 ランダムな単語

まず、日本語の単語を100個列挙してください。単語の間は「/」で区切ってください。その出力の後、次に、そこからランダムに単語を選び「お題」と組み合わせて魅力的なアイデアを考えてください。「お題」は〈 アイデアを得たい対象を記入 〉です。

技法4 異質の取り入れ

〈 課題や目的を記入 〉
この問題の解決に、まったく異質な要素を7つあげ、それぞれを取り入れた案を考えてください。それにはどのような効果がありますか?

技法5 写真の中のヒント

この画像から思い浮かぶことを10個あげてください。次にそれを材料にして〈 アイデアを得たい対象を記入 〉として妥当なものを3つ、意外なものを3つ考案してください。

技法6 制約なき発想

エネルギー、資金、時間、人材、法規制の制約がまったくないとしたら、もっとも理想的な〈 アイデアを得たい対象を記入 〉する手段は何だと思いますか?

参考図書

この記事で紹介した内容は、書籍『AIを使って考えるための全技術』で紹介されている50以上のテクニックのうちの1つです。もっとずるい思考法を知りたい方は、ぜひ読んでみてください。👉『AIを使って考えるための全技術』

また、壁打ちについては、『AI壁打ち入門』もおススメです!

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この記事を書いた人

あなたの隣りに何時もいる『ITC顧問』こと、ふくろう博士です。ITC和歌山オフィスの『ITC顧問』スタッフとして、簡単・シンプル・手頃なICTツールを駆使して、あなたの会社の課題解決のお役立ち情報を呟いています。気軽に、フォローなどでお声をお掛けください。
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