はじめに
先日、「ITコーディネーター京都経営セミナー」に参加し、企業間取引のデジタル化、特に中小企業共通EDIについて深く学ぶ機会を得ました。本記事では、セミナーの内容を基に、EDI導入のメリット、最新事例、そして中小企業がDXを推進するためのヒントをまとめました。
基調講演:中小企業共通EDIの目指すもの
企業間取引デジタル化の必要性
従来の企業間取引では、注文書を印刷しFAXで送付、受け取った側が手入力でシステムに再入力するという非効率なプロセスが一般的でした。例えば、1つの注文書の処理に平均20分を要するというデータもあり、これが1日に数十件発生することで、月間で数百時間の無駄が生じているとされています。この二度手間は、業界全体で莫大な損失につながっていると指摘されました。
EDIとは?
EDI(電子データ交換)は、業務アプリケーションで持つデータを、紙に出力せずデジタルのまま送受信する仕組みです。これにより、チェックや突合の自動化、ペーパーレス化、データ管理・活用など、多くのメリットが得られます。
中小企業におけるEDI普及の課題
しかし、中小企業におけるEDIの普及率は低く、その主な原因は導入コストの高さでした。従来型のEDIでは、発注企業がEDIサーバーを構築する必要があり、受注企業も専用のソフトやサーバーが必要となるため、コストが大きな障壁となっていました。
中小企業共通EDIの誕生
この課題を解決するために
中小企業庁は実証実験を行い、低コストで簡単に使える共通EDIの標準仕様を公開しました。この標準仕様には、XMLやJSONを利用した統一フォーマットの採用、クラウド上でのホスティング、既存システムとの容易な連携が含まれています。これにより、発注企業も受注企業もサーバーを持つことなく、月額利用料のみでEDIを利用できる仕組みが実現しました。
中小企業共通EDIの仕組み
- クラウドサービスとして提供
- 発注企業と受注企業がクラウド上で接続
- 業務アプリケーションとの連携が容易
- 共通のメッセージ形式でデータ交換
- 見積もりから支払いまで一連の取引に対応
- セキュリティ対策も万全
メールとの違い
メールでのやり取りでは、相手先ごとに送信する必要があり、既読確認や変更履歴の管理が難しいという問題があります。また、誤送信や添付ファイルのダウンロード漏れといった人為的ミスも頻繁に発生します。さらに、ZIPファイルによるパスワード付きのファイル送信はセキュリティ上のリスクがあり、推奨されていません。一方、共通EDIでは、データが自動で処理され、変更履歴やステータス確認が容易になるため、これらの問題を解決し、業務効率化とセキュリティ向上を両立できます。
中小企業共通EDI導入によるDX推進
DXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データとデジタル技術を活用し、業務や経営を変革し、競争力を向上させることです。例えば、製造業ではIoTを活用して機械の稼働状況をリアルタイムで把握し、保守スケジュールを最適化することでダウンタイムを削減する事例があります。
導入事例:佐々木様(ワイヤーハーネス製造)
山梨県の佐々木様では、自社開発した機関システムから注文書をPDFで送信していましたが、納期回答は手書きやメールで行っていました。そこで、共通EDIを導入し、注文書をデータで送信、納期回答もデータで受け取るようにしました。さらに、指定の納品書を発行することで、検品作業も効率化しました。この結果、業務効率が大幅に向上し、顧客満足度も向上しました。
その他の事例
- 発注企業主導で古いシステムでもCSV連携でEDI導入
- 受注企業主導でWebEDIを導入し、業務効率化と事業拡大を実現
課題解決のヒント
- CSVデータでの連携から始める
- 受注者側からのアプローチも有効
- まずは自社で出来ることから始める
- 専門家(ITコーディネーター)に相談する
ITC京都の取り組み報告
設立20年の歴史と活動内容
デジタル化推進事業での支援実績や共通EDIの普及活動について報告されました。特に、導入が進まない理由として、コストや技術的な課題が挙げられ、それを克服するための具体的な取り組みが紹介されました。
サービス紹介:株式会社エックス
「エクスジェン エディフィス」の特徴
- クラウド型のプラットフォーム
- 幅広い範囲をカバー
- 低コストで簡単導入
- CSVやAPIによる連携
- インボイス制度・電子帳簿保存法対応
まとめ
今回のセミナーでは、中小企業共通EDIの重要性と、導入によって得られる多くのメリットについて理解を深めることができました。EDI導入は、業務効率化だけでなく、DX推進、ひいては企業の競争力向上にも不可欠であることがわかりました。
具体的には、自社の取引プロセスを洗い出し、導入可能な部分からデジタル化を進めることが推奨されます。また、専門家に相談して必要なツールやシステムを選定し、段階的に進めていくことで、無理なく効果的なデジタル化が実現できます。
中小企業においては、まずはできる範囲からデジタル化を進め、専門家のサポートを受けながら、自社に最適な形でEDIを導入していくことが重要だと感じました。
おわりに
セミナーの最後には、ITコーディネーター協会への相談窓口も紹介されました。この記事を読んだ皆様も、もしEDI導入についてご興味をお持ちでしたら、ぜひ専門家にご相談ください。
■1.ITC京都主催「共通EDIセミナー」YouTube配信中!
11/27にITコーディネータ京都主催の経営セミナーとして開催された
共通EDIの紹介セミナーの録画がYouTubeにて配信中です。
◆YouTube配信共有
◆セミナの概要
企業間取引のデジタル化/効率化~中小企業共通EDIのご紹介~
<プログラム>
・基調講演:中小企業共通EDIのめざすもの
特定非営利活動法人ITコーディネータ協会 共通EDI事務局 野田 和巳
・取組報告:ITC京都がめざす企業間取引の姿
特定非営利活動法人ITコーディネータ京都 理事長 曽我部 泰博 氏
・サービス紹介:共通EDI認証商品・サービスのご紹介
株式会社エクス 営業統括本部 インサイドセールス部 木本 洸介 氏
是非、ご視聴ください。
【ご参考】令和6年度補正予算・IT導入補助金は受発注デジタル化に有効!
12/17に令和6年度補正予算が成立し、中小企業生産性革命推進事業の一部と
してIT導入補助金も含まれております。
(参考1)令和6年度補正予算案の事業概要(PR資料)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_hosei_pr.pdf
※P1に中小企業生産性革命推進事業(3,400億円)としてIT導入補助金の記載
(参考2)令和6年度補正予算・令和7年度当初予算関連
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/
◆受発注デジタル化・EDI導入にも有効な以下の補助金枠があります。
●複数社連携IT導入枠
・10者以上の中小企業·小規模事業者等が連携した、インボイス制度への対応や
キャッシュレス決済を導入する取組等を支援
・導入や活用に向けた事務費·専門家経費も補助対象
●インボイス枠 インボイス対応類型
・令和5年10月1日に開始されたインボイス制度への対応に特化した支援枠で、
会計·受発注·決済ソフトに加え、PC·タブレット·レジ·券売機等のハードウェア
導入費用も支援
・小規模事業者は最大4/5補助し、補助下限は無く、安価なITツール導入も支援
●インボイス枠 電子取引類型
・取引関係における発注者(大企業を含む)が費用を負担してインボイス対応済
の受発注ソフトを導入し、受注者である中小企業·小規模事業者等が無償で利
用できるケースを支援