2024年には、POS(販売時点情報管理:Point of Sales)やEDI(Electronic Data Interchange:企業間電子データ交換)システムなどで通信に広く利用されてきた「ISNネット」の「デジタル通信モード」が終了します。
ISDN回線を使ったサービスが利用できなくなると考えると分かりやすいでしょうか。ISDN回線は企業内のさまざまなシステムで利用されていることから、関係するシステム全体で何らかの見直しや対策が急務です。
- EDIの2024年問題とは?
- ISDN回線終了で何がどうなるか?
- 既存の電子商取引システが使えなくなる。最悪の場合には業務が停滞してしまう可能性があるという2024年問題する。費用と時間をなるべくかけずに対応する選択肢はあるだろうか?
など質問を頂くことが多くなりました。それについてお話します。
ISNネットのデジタル通信モード終了の理由とは
なぜデジタル通信モードを終了するのでしょうか。その背景には固定電話契約数の減少などの問題があります。総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和元年度第2四半期(9月末))」によると、2019年9月末段階で固定電話の契約数は5404万件、そのうちNTT東西は1762万件と、2002年の2610件から大きく利用者数を減少しました。NTT東西の別の資料でも、固定電話契約数は1997年がピークで6270万件、2017年には2042万件と約67%も減少したことが明らかになっています。
こうした事情から、従来「PSTN」(Public Switched Telephone Network=公衆交換電話網)で提供していた固定電話サービスは維持コストの削減を余儀なくされている状況になっています。IP網に移行することで、交換機や収容局などの運用負担を削減することが狙いだそうです。
ISNネットのデジタル通信モードは企業内のさまざまな業務で広く利用されています。例えば、小売店舗ではクレジットカード決済で使われるCCT(信用照会端末)やPOSシステム、医療機関ではレセプトのオンライン請求システム、メーカー間の取引で使われる電子商取引(EDI)、金融機関のシステムと接続して給与振り込みなどを実行する「エレクトロニックバンキング」などが該当します。その中でも影響を受ける企業が多いとされるのがEDIです。例えば、食品スーパーの受発注データは大量のデータで、受信後振り分け処理も時間が決まっており、余裕がない状態でEDIを行っています。
「切替後のISNネット上のデータ通信(補完策)」では安心できない理由
ISNネットのデジタル通信モードのサービス終了は決定事項ですが、影響範囲が広いことが問題となっています。そこでNTT東西はサービス終了に際して、影響を最小化すべく、既存の設備を利用した「切り替え後のISNネット上のデータ通信」(補完策)を2027年頃まで提供することを表明しており、そのための検証環境も提供しています。
このことから「急ぐことはない」と考えると非常にまずいです。
実際にはNTT自身が「全く同じ品質とはならない」「利用する危機によっては処理に時間時間が増加する」と表明しています。今までと同じ業務を維持できるかどうかは保証していません。実装の使用上、既存のISDN通信よりもオーバーヘッドが大きく、データ遅延が生じやすいことが指摘されているため、現在の処理速度を前提とした業務が成り立たなくなる可能性が指摘されています。
この結果から、既存のEDI利用企業が従来通りの取引業務を維持するには2024年までに何らかの方法でインターネットEDIに移行する必要がある。特に、中小企業共通EDIに移行されることが賢明であると思います。
EDIの移行方法は? 2つのタイプアプローチとそれぞれの課題、移行のデッドライン
情報技術サービス産業協会(JISA)がまとめた「ISNネットディジタル通信モード終了によるEDIへの影響と対策 V1.1.2」(JISA EDIタスクフォース)によると、インターネットEDIへの移行のアプローチは2つのパターンが考えられる。
- 既存の業務フローを変えず、通信の部分だけをインターネットEDIに切り替える方式
- 業務フローの見直しや標準化と合わせて各業界標準に準拠したシステムを導入する方式だ。
EDI化率100%をめざして、国際標準に準拠した中小企業共通EDIを活用し、FAXによる受発注による手間や多画面問題で悩んでいるベンダーなどの中小企業のDXのはじめの一歩に検討いただければと思います。