自治体DX推進OJT報告会

本OJT報告会は、自治体DX推進における様々な成果と課題を明らかにされてます。

目次

全体的な成果と認識された強み

  • 高いOJT参画率と実践機会: 自治体支援基礎研修の受講者全体の10%以上がOJTの機会を得ており、実際の自治体案件に高い確率で関与できていることが示されました。
  • 人材育成と関係性構築: このOJTは、一般的な企業内での人材育成に留まらず、トレーナーとトレーニー、そして関連する人々との関係性を将来的なパートナーシップへと発展させることを重視しています。
  • ITコーディネータの独自性: ITコーディネータは、自治体業務の改革(業務見直し)において、既存の自治体支援プレイヤーにはないBPR (Business Process Re-engineering) やPGL (Process Governance and Leadership) の強みを持っていると再認識されました。
  • 自己課題の認識: OJT参加者は、現場での経験を通じて「自分にはこんな課題があって、こうしなきゃいけない」という自己課題の認識に至ることができ、これがOJTの大きな成果と評価されています。
  • 外部人材としての登録促進: 複数のトレーニーが総務省の「外部人材確保支援制度」に専門家として登録を果たすなど、具体的なキャリアパスに繋がる成果が出ています。
  • 1人立ちできる人材の育成: 報告会では、OJTを通じて自治体支援で「1人立ち」できるレベルに達したITコーディネータが育っていることが強調されました。

OJTで明らかになった具体的な成果(事例別)

富士見市(トレーニー:広瀬さん、トレーナー:斎藤さん)

  • 成果:
    • これまで不明瞭だった自治体の業務、情報システムの構成、予算感、スケジュール感を実感をもって理解し、視野を拡大できました。
    • 自治体特有の用語や運用への理解が深まりました。
    • デジタル庁の説明会参加を通じて、他自治体の進捗状況や課題の違いを認識できました。
    • フロントヤード改革や働き方改革の専門部会への参加により、自治体業務の実態や職員の職務内容を理解できました。
    • 市民役での窓口体験調査は、自治体業務を知る上で貴重な経験となりました。
    • システム相談会を通じて多様な課題を認識し、システム調達の手順や作法を把握できました。
  • 課題:
    • 政府共通プラットフォーム関連の豊富な資料の事前読み込みが不足し、技術的な理解が追いつかない点がありました。
    • OJT期間内での自治体への具体的な貢献が不足していたと感じる点がありました。
    • CIO補佐官業務の広範な内容に対し、短期集中での実施はインプット量が多すぎた可能性があります。
  • 今後の改善点:
    • OJT内容において、体得すべきポイントや目標をより明確に設定することの必要性が認識されました。

三郷町(トレーニー:馬方さん、トレーナー:米田さん、彼さん)

  • 成果:
    • 2年目のOJT参加により、自治体業務の理解を深め、部門から提出される文書の読み込み能力が向上しました。
    • 予算検証において、参照すべき資料や必要な情報の入手方法を学ぶことができました。
    • セキュリティガイドラインの読み込みを通じて、セキュリティに関する理解が深まりました。
    • 総合戦略策定会議への参加により、町の総合戦略におけるデジタル化の影響の上流部分を把握できました。
  • 課題:
    • OJT全体のスケジュール感を事前に把握できていなかったため、情報収集や事前準備が不足しがちでした。
    • 自身の専門性(マーケティング)をOJTの中で十分に活かせなかったという反省点がありました。
  • 今後の改善点:
    • 全体像を把握し、各会議の進行役を務められるくらいの内容理解を目指すことが目標とされました。
    • 今後は具体的な案件での協業の形を模索しています。

堺市(トレーニー:前田さん、トレーナー:米田さん、江口さん)

  • 成果:
    • 自治体内部の合意形成プロセスや、各部署におけるDX推進の現実的な課題(人材、予算、理解度)を肌で感じることができました。
    • 現場業務への理解が深まり、DXの進め方に対する理解度も向上しました。
    • ITコーディネータとしての活動が展開できる可能性を実感しました。
  • 課題:
    • 自治体業務に関する基礎知識の不足を感じ、最適な解決策を提案する引き出しの少なさを痛感しました。
  • 今後の改善点:
    • 多様な自治体案件に関わり、業務理解と解決策の引き出しを増やすことが目標とされました。

中城村・恩納村(トレーニー:新里さん、トレーナー:平さん)

  • 成果:
    • 長期的なシステム運用の重要性や品質確保、研修の重要性を実感できました。
    • 契約書や仕様書のレビュー、セキュリティポリシーの改定支援、新人職員へのレクチャーなど、広範囲な業務を経験できました。
    • IT顧問(CIO補佐官)の視座の高さや、関係者間の調整、配慮、合意形成といった「人」と「組織」に関わる視点の重要性を学びました。
  • 課題:
    • 職員のITリテラシーへの配慮が不足し、専門用語を使って理解を損ねる場面がありました。
    • 複数のベンダーが存在する中での共通言語化が課題として残りました。
    • 現場の空気感や顔色を読み取ること、資料の事前読み込みが不十分な点がありました。
    • 現場の温度差を把握するための現地訪問がOJTの制限内で十分に行えなかった点がありました。
  • 今後の改善点:
    • 「なぜそれが重要か、今後どうするのか」というストーリー性のある発言を意識し、職員が自走できるような支援のバランス感覚を養うこと。
    • 決裁権を持つ幹部への定期的な報告の重要性を認識しました。

名護市(トレーニー:新里さん、トレーナー:平さん)

  • 成果:
    • 特定個人情報管理の内部監査において、監査項目や現場の実務のあり方を学びました。
    • トレーナーの監査方法から、気づきを与える監査の重要性を体感できました。
  • 課題:
    • 監査項目の背景にある法令やガイドラインの理解が不十分で、指摘内容を即座に自分のものにできなかった点がありました。
    • 現場の具体的な業務フロー(細部の動き)への理解が浅く、ヒアリングのポイントを掴みきれなかった点がありました。
  • 今後の改善点:
    • 法制度や監査チェックリストの構造を再認識し、現場対応に結びつける力をつけること。
    • 番号関係の利用事務の流れや管理ポイントを事前に把握すること。
    • 監査準備から報告書作成までの一連の流れに対応できるようになることが目標とされました。

山形市(トレーニー:小林さん、星さん、トレーナー:泉さん)

  • 成果:
    • 自治体内部の業務内容やプロセスの知見を得ることができました。
    • DX相談会への参加を通じて、各課の多様な課題を把握し、現地訪問で深い実感を伴う経験を得られました。
    • 県が提供するオンライン申請プラットフォームなど、既存の有効な取り組みが存在することを知りました。
    • 市役所内でのデジタルデバイド(情報格差)の存在を認識しました。
    • 情報システム推進体制の重要性を実感しました。
    • 2年間のOJTを通じて、民間企業向けの作法から自治体向けの作法への適応が見られました。
  • 課題:
    • 自治体業務が民間企業とは異なるため、各課の業務内容をさらに深く把握し、的確に導くための自己学習の必要性。
    • デジタル庁や総務省の方向性が頻繁にアップデートされるため、自身の知識も常に更新する必要性。
    • OJTの機会が限られ、1回あたりの時間が短いため、十分な成果を得るのが難しいと感じる点がありました。
    • DX推進計画の立案・実行に関する経験が不足している点。
    • 最新のITツール、サービス、AIに関する知識の不足。
  • 今後の改善点:
    • 自治体の取り組みや情報システム推進体制に関する情報収集を継続し、知識を深めること。
    • ITコーディネータ間の情報共有・連携の仕組みを強化すること。

川西町(トレーニー:星さん、トレーナー:斎藤さん)

  • 成果:
    • 情報セキュリティポリシーの改定支援を通じて、総務省基準の網羅性や、小規模自治体での情報システム担当者の負担の大きさを認識しました。
    • DX・セキュリティ研修のコンテンツ作成から実施まで関与し、小規模自治体が直面するDXの現状と課題を直接認識できました。
    • トレーナーと自治体担当者間の信頼関係やパートナーシップの重要性を実感しました。
    • ITコーディネータが小規模自治体で支援できるビジネスの機会があることを認識しました。
  • 課題:
    • 当初の目的であったBPRが、情報セキュリティポリシー改定に集中したため十分に実施できなかった点。
    • OJTの実施時間が長く、開始時刻が早いため、トレーニーの負担が大きかった点。
    • 他の自治体の詳細な情報把握が不足している点。
  • 今後の改善点:
    • より柔軟な時間設定が可能なOJT案件を検討すること。
    • 情報セキュリティに関する知識や、多様な自治体の情報収集を継続的に行うこと。

今後の取り組みと期待

  • ITコーディネータ協会は、今後も自治体の現場に入り、自治体支援ができるITコーディネータを育成し、案件情報を提供し続ける予定です。
  • 来年度も新たな案件でのOJT実施が予定されており、参加者を募集していく方針とのことです。

耳聞創知(「自治体DX推進OJT報告会」のPODCASTによる報告です!)

ITコーディネータ協会公式チャネルにアップされた『2025/6/5「自治体支援ワーキングOJT報告会」』を参考に、作成しました。

「耳聞創知」という言葉は、「耳で聞いた情報をもとに、新しい知識や知恵を生み出すこと」、または「伝聞情報から、自分自身の知識や考えを深めていくこと」という思いを込めて「問いかけ先生GPT」とAI壁打ちをしながら四字熟語を作ったものです。

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この記事を書いた人

あなたの隣りに何時もいる『ITC顧問』こと、ふくろう博士です。ITC和歌山オフィスの『ITC顧問』スタッフとして、簡単・シンプル・手頃なICTツールを駆使して、あなたの会社の課題解決のお役立ち情報を呟いています。気軽に、フォローなどでお声をお掛けください。
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