テレワークが広まっている傾向にあります。
新型コロナウイルスの感染拡大で4~5月に政府が出した緊急事態宣言を受け、テレワークを導入する企業が増えました。東京商工会議所が会員約1万2000社を対象に5月下旬~6月上旬に行った調査によると、テレワーク実施率は67・3%と半数を超えました。
テレワークは、英語の「遠い」(Tele)と「働く」(Work)を合わせた単語で、会社に出勤せず自宅や共用オフィスなどを使って仕事をすることです。
場所にとらわれない働き方で、インターネットなど情報通信技術(ICT)が発展したことで可能になりました。2011年の東日本大震災をきっかけに危機管理の面から注目されましたが、導入はベンチャー系のIT企業など一部にとどまっていました。
Q1.緊急事態宣言は解除されたけど、テレワークを続けている企業が多いのでしょうか?
A1.感染拡大の「第2は」への警戒や政府がテレワークの継続を求めていることも有り、大企業の多くが引き続きテレワークを推奨しています。ただ、緊急事態宣言が解除されて以降、出勤する社員の割合を段階的に増やしている企業が多く、都市部では通勤ラッシュも復活しつつあるようです。
Q2.このままテレワークが定着するでしょうか?
A2.テレワークが定着するには課題も多いです。6月に内閣府が公表した新型コロナ感染拡大を受けた生活意識・行動の変化に関する調査では、テレワークの利用拡大で必要な課題(複数回答)と聞いた内容が下記の通りです。
- 「社内の打ち合わせや意思決定の仕方の改善」(44.2%)が最も多く
- 「書類のやり取りを電子化・ペーパーレス化」(42.3%)
- 「社内システムへのアクセス改善」(37.0%)が続きました。
日本の企業では部署ごとにチームで仕事をすることが多く、会議による意思決定や印鑑による書類の決裁が一般的です。外出自粛になっても会議や書類決済のために出社したという人も多く、日本の企業の企業文化が導入拡大の壁になっています。
また、自宅のパソコンから社内のシステムにアクセスする際には情報漏洩を防ぐための安全対策が必要ですが、その対応も遅れています。
Q3.テレワーク導入の課題の克服は難しいですか?
A3.押印に代わる電子決済やIT機器、ネットワークの安全対策には費用が掛かります。また、会議など社内の意思決定の方法の見直しも必要で、企業によってはハードルが高いようです。
しかし、今回多くの従業員がテレワークを経験したのを機に、拡大に踏み出す企業も出始めています。
- 日立製作所は、2021年4月から在宅勤務などテレワークを標準的な働き方とする制度を導入する方針です。国内従業員(単体ベース)約3万3000人の平均在宅勤務率を5割程度とすることを目指すとのことです。
- カルビーも7月から、オフィスで働く社員はテレワークを原則とし、業務に支障がない場合は遠隔地での単身赴任を解除する新制度をはじめたとのことです。
テレワークを標準的な働き方にする場合、従来のような勤務時間ではなく仕事の成果で評価する人事制度への転換が必要になる可能性もあります。
テレワークは、「働き方改革」や介護離職などの防止につながるとされています。また、オフィスの経費抑制の効果も見込まれ、従業員と企業双方にメリットがあるとされています。課題を一つ一つ解決して定着させられるかは、企業トップの決断にかかっていると言えると思います。
(参考)
内閣府が6月に公表した新型コロナウィルス感染拡大を受けた生活意識・行動の変化に関する調査(インターネット調査で全国1万128人が回答)によると、新型コロナの感染拡大で就業者の34.6%が「テレワークを経験した」と回答し、39.9%が今後の利用を希望した。政府は東京オリンピック・パラリンピックの混雑回避策として推奨していたが、新型コロナが普及の起爆剤になったとコメントされている。